小泉大臣は偉大なポピュリスト、ケネディ大統領に学べ

ネット論壇では、福島第一原子力発電所のトリチウム放出や石炭発電所の廃止などの発言を巡って小泉進次郎環境大臣が袋叩きにあっています。私は原子力や石炭火力に関する氏の主張に必ずしも与しませんが、氏の政治的な才覚や国民を引きつける力は十分に総理大臣の器だと思います。

進次郎さんはポピュリストだからだめだという主張がありますが、私はむしろ進次郎さんのポピュリスト度合いが中途半端だからだめなのだと思います。田んぼにスーツで分入っていった田中角栄はポピュリストの最たるものです。

間接民主主義において政治家はポピュリストでなければなりません。おそらく、ポピュリズム(大衆迎合主義)とポピュリスト(大衆主導者)は分けて考えた方がいいと思います。中身のあるポピュリストが理想的で、河野太郎さんが一皮向けたように、進次郎さんもまだまだ中身を詰める時間があります。

ですので、もしも私が氏のブレーンだったとして、これから氏はポピュリストとしてどのように振る舞えばいいのかを考えてみたいと思います。

そのヒントは偉大なるポピュリスト政治家、ジョン・F・ケネディの1960年の大統領就任演説にあるでしょう。まず、以下のフレーズはあまりにも有名です。

米国民の同胞の皆さん、あなたの国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。 あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい。

在日米国大使館サイトより

胸を打つフレーズですが、よく考えればこれは責任逃れでもあります。ソ連共産主義と戦うのは、私ではなくてあなただと言っているわけです。トランプがこれを言ったら反発されるでしょうが、甘いマスクの若いケネディさんだから心に響くわけです。

第35代大統領 ジョン・F・ケネディ。米国大使館サイトより

だから「原発のいらない世界を実現できるかは、国民一人ひとりの行動にかかっている」という趣旨を小泉さんの言葉でビシッと言えば、国民はそのリーダーシップに魅惑されるでしょう。もともとトリチウム放出も石炭火力も環境省所管でないので、実際には自分は何もしなくて良いわけです。

次にこのフレーズです。

われわれの幸福を願う国にせよ、われわれの不幸を願う国にせよ、あらゆる国に対して、われわれは自 由の存続と成功を確保するためなら、いかなる代償をも払い、いかなる重荷も負い、いかなる苦難にも立 ち向かい、いかなる友人をも支持し、いかなる敵にも対抗することを知らしめようではないか。

これも胸を打ちます。ケネディさん素敵です。この演説では一貫して「われわれ」を多用しているのにご注目ください。しかしながら、これも責任転化です。「私も石炭火力廃止に立ち向かい、所管外だけど、自分のできる範囲でそれなりに容認派と対抗するから、石炭廃止派の皆さんも頑張ってエネ庁と戦ってくださいね」と言っているのと同義です。進次郎さんはノーリスクです。次はこのフレーズです。

双方とも、われわれを対立させている諸問題をくどくど論ずるのではなく、何がわれわれを団結させる 問題なのかを探究しようではないか。

これも素敵なのですが、何も言っていないのと等しいわけです。「反原発派も容認派も、原理的な論争はやめて、国益のためにどう団結できるかを探求しよう」。何も具体的なソリューションは提供していません。これも石破さんや橋下さんや世耕さんがいうとカチンとくるのですが、小泉さんなら素敵に響くわけです。

事務方に断りもなくいわき漁協に出向いたのが批判されていますが、それ自体がいけなかったのではなく、その後に福島第一原発のタンクの山を見ながら、うーんと唸っている絵を記者団に撮らせなかったのがいけなかったのです。そして、一言「難しい問題だね。みんなで一緒に考えていかないといけないね。」といえばよかったわけです。

そうすれば、反対派は「進次郎さん真剣に脱原発を考えてくれているんだ」と解釈するし、賛成派は「みんなが触れなかったタブーに切り込んでいるな」と好意に解釈してくれるのではないでしょうか。次にこのフレーズです。

今、われわれを召集するラッパが再び鳴っている。それは、武器は必要ではあるが、武器を取れとの合 図ではない。われわれは闘争の中にあるが、戦闘に参加せよとの呼びかけでもない。それは、年々歳々、 「希望に胸躍らせ、苦難に耐えて」長いたそがれの闘いの重荷を引き受けよ、との呼びかけである。その 闘争は、人類の共通の敵である圧政、貧困、疾病、そして戦争そのものに対する闘いである。

素晴らしい言葉です。つまり、反対派も賛成派も反対していない、国民のコンセンサスが取れるようなアジェンダを設定すればいいのです。当たり前のことを当たり前に言うだけでそれが小泉さんの口から発せられるだけで「進次郎さんその通り!」と国民は納得してくれるでしょう。例えばこう言います。

「外国の石油や石炭に頼っている脆弱なエネルギー安全保障をどうにかしなければいけないね。僕自身は原発のない世界が理想だと思うのだけれど、反対派も賛成派もみんなで一緒に議論しなければいけないね。いずれにしても、政府は2030年に22ー24%の再エネ目標を掲げているんだけど、お金をかけずに無理なく進める現実的な施策をみんなで一緒に考えるべきだね。環境省では、「地域循環共生圏」という、地域でエネルギーやお金が回るビジョンを掲げているんだよ。僕はその実現に向けて全力を尽くすから、みなさんも是非協力してほしい」

こうすれば、誰も傷つけずに、小泉さんが描いているビジョンを語れるのだと思います。小泉進次郎さんは是非ポピュリスト政治家の道を邁進して、総理大臣を目指して行って頂きたいと思います。