「電力シェアリング」に向けたニューヨーク州の挑戦

交通部分野と並んで、デジタル経済化が可能にするシェア経済が劇的な変化をもたらすと期待されているのが電力セクターです。それは、これまでの中央集権的な発電・送電システムから、住宅やビル・工場に置かれた分散型の再生可能エネルギーによる地産地消への移行がもたらします。例えば、隣接する住宅同士の電力のP2P取引なども、デジタル化・データ化のおかげで、技術的にはほぼ可能になって来ています。ただ、こうした「電力シェアリング」はUberのような「ライドシェア」のように簡単には行きません。

太陽光や風力は、お天気だよりのため、発電量が振れがちで、蓄電池や電気自動車(EV)の充放電である程度吸収して平準化することできますが、一年あたりの停電時間が10分程度の高度な供給信頼度の確保のためには、もしもの時には依然として送電網に頼った方が経済合理性が高いからです。

ですので、まずは需要家の敷地内にある太陽光発電や電池・EVで需要と供給のバランスを確保する、そこでダメなら近隣同士で電気を分け合う(P2P取引)、そこでダメなら町内にある配電線ネットワークでバランシングを試みる、そこでもダメなら上位の高圧送電線ネットワークでバランスさせる、こうした重層的な管理をすることが求められます。これを専門用語でクラスター拡張型マイクログリッドと呼びます。

こういった従来の「上からの管理」から「下からの管理」への移行は電気工学的に高度な技術を求められます。この分野で第一人者の横山 隆一早稲田大学名誉教授は、「地域自律型マイクログリッド研究会」を主宰されていて、私もこの度同研究会の顧問を務めさせて頂くことになりました。6月7日(金)には、政府機関・電力会社・民間企業等をお招きして拡大会合が開かれます。

さて、こうした技術的な困難性が克服されたとして、次に金融的な課題を克服しなければいけません。

そこで注目される動きが5月16日にニューヨーク州でありました。ニューヨーク州当局は、太陽光発電等自家消費用発電設備を持つ需要家に対して、いざという時に送電網から電力供給を受けるバックアップ料金 のよりキメの細かい徴収手法を承認しました。

Utility Dive 記事 より引用

The New York Public Service Commission on Thursday approved changes to standby and service rates offered by investor-owned utilities, a move they say “reorients the electric industry toward a consumer-centered approach.”

In particular, the PSC’s order expands the availability of demand rates by requiring opt-in eligibility for all customers, whether or not they have distributed energy resources (DER) installed on-site. Regulators said all customers can benefit from improved alignment between costs and system contributions of DER.

一方で日本では送電ネットワークの利用(託送料金)は、7割がkWhあたりの料金です。すなわちタクシーと同じように使ったら使った分だけ支払うという仕組みです。すると万が一の時だけ利用する顧客はほとんど託送料金を払わなくて良くなってしまいます。これではマイクログリッドの外側の顧客に過剰な負担を強いることになります。ニューヨーク州の例は、皆が公平になるよう料金制度を変えようというものです。実は同様の制度は既にカンボジアでも今年の初めに導入されています。

他方でマイクログリッドが送電網にもたらすプラスの面もあります。マイクログリッドは蓄電池やEVの放充電により、上位送電網の需給が逼迫したら節電し、余ったら沢山買って貯めるという調整力があるので、システム全体を安定させることが出来ます。

ですので、上位送電網に負担を強いる分は追加料金を払い、調整力を供給する分はお金をもらうという両方向でのきめの細かい料金の導入が必要となります。それがビッグデータで出来るようになりつつあります。。

まさにデジタル経済がシェア経済を可能にする典型事例と言えましょう。

その実用化を巡って、以下のように、日本国内で多くの企業が研究・実証実験を行なっています。